こんにちは、suzukaです。
今回ご紹介するのはこちら。
『スウェーデン福祉大国の深層: 金持ち支配の影と真実』
北欧礼賛、理想郷、幸せの国。
北欧諸国の1つであるスウェーデンに、好意的な印象を持っている人は多いのではないでしょうか。
私もそのうちの一人、でした。
もちろんスウェーデンは、日本とは全く異なる言語、歴史、文化を持ち、とても魅力的な国だと感じています。
しかし私は実際にスウェーデンに住んでみて、スウェーデンも様々な深刻な問題を抱えている国だということに気づきました。
当書では、2012年からスウェーデンに拠点を移しスウェーデン企業で勤務している近藤浩一さんが、スウェーデンへの一般的なイメージに捉えられず、医療、教育、経済、環境など様々な観点からスウェーデンの本当の姿を暴きます。
こんな方にオススメ
- スウェーデンの表面だけではなく「深層」にも目を向けたい。
- スウェーデンについて幅広く知りたい。
- イメージが覆されるような体験をしたい。
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『スウェーデン福祉大国の深層: 金持ち支配の影と真実』の概要
書籍情報
題名: 『スウェーデン福祉大国の深層: 金持ち支配の影と真実』
著者: 近藤浩一
出版社: 水曜社
発行年月日: 2021年2月5日
ページ数: 240
大見出しは以下の通りです。
- 日本とこれだけ違う 仕事の効率、考え方やり方
- 本音を言わない国民性 我慢の住宅と暮らし方
- 高い医療費、低い医療・福祉サービスの危ない生活
- 教育レベルとともに下がる子どものモラル
- 世界の金融・経済を牽引する銀行とグローバル企業
- 環境ビジネスがもたらす環境大国の崩壊
- 軍事産業が主導する経済と外交
- 移民・難民の流入に歪むメディア
- 謎の一族支配と世界の権力者ネットワーク
あらすじ
日本人がスウェーデンに抱くイメージは、なぜか固定化されている。
税金は高いが福祉が充実して老後の不安はない。
人々はのんびり働くが仕事効率はよく、自然豊かな環境でバカンスを楽しむ。
充実した医療サービスで、最先端の医療を受けられる…
だが本当に、少子高齢化が進む日本の規範となる夢の国なのか。ヨーロッパに10 年以上暮らし、現地企業に勤務する著者が、「武器輸出大国」で「一握りの金持ち」が支配するスウェーデンの真の姿と実情を報告する。
出典: Amazon
『スウェーデン福祉大国の深層: 金持ち支配の影と真実』の書評
当書では幅広い話題が扱われていますが、私は3つの問題について着目しました。
スウェーデン人の効率的な働き方
日本では長時間労働、残業は当たり前、プライベートの時間が潰れる、と言った話は珍しくないでしょう。
一方スウェーデンでの働き方については、最低25日間の有給休暇、コーヒー休憩とも呼ばれるフィーカの文化、仕事よりもプライベートの時間を大切にする、と言ったことがよく挙げられます。
日本よりも就業時間が短いにも関わらず、先進国として経済を回している。
となると日本人の働き方が不効率的であり、スウェーデン人の働き方が効率的ということなのか。
と思われるのではないでしょうか。
そこで興味深いのは、「欧米と日本では効率に関する考え方が違う」というのが取り上げられていること。
日本人がスウェーデン人に対して、効率的に働いているというイメージを持っているというのをよく耳にしますが、著者がどういった効率性なのかということにも目をつけるのが新鮮でした。
日本人とスウェーデン人の意図する効率性への考え方が必ずしも一致しないということを知ると、お互いの働き方に対する見方が変わります。
スウェーデンの生産率の高さについても言及されているので、なぜスウェーデンで見られるような働き方ができるのか理解を深めることができます。
問題を抱える医療サービス
福祉国家で社会保障も広範かつ高水準であると考えると、医療サービスの質も高いのでは?
多くの自治体で子供の医療費は無料、そして大人でも医療費は年間1150kr(約1万3800円)が上限でそれ以上は無料などの制度がとられており、スウェーデンの医療サービスに対して良いイメージを持たれている方もいるかもしれません。
しかしスウェーデン医療に関してたくさんの問題が取り上げられています。
長すぎる診断や治療までの待ち時間。高額な歯科治療費。医療事故等のトラブル。
診断や治療までの待ち時間が長いという問題は深刻で、手術に至るまでの待ち時間の間に亡くなった人もいるという状況。
病院にかからない健康な人には不利益を被ることはあまりなさそうですが、病人には厳しい実態が見受けられます。
当書では社会保障が充実しているからと言って、本当に国民へサービスが十分に行き届いているのか、本当に機能しているのだろうかという疑問に答えてくれるでしょう。
ヴァレンベリ家がもたらす影響
なかなか耳にしたことがないであろうヴァレンベリ家という名。
しかしこの大富豪一家が、多くの大事な局面や分野に影響力を持っているというのをご存知でしょうか。
ヴァレンベリ家の所有するヴァレンベリ財団はスウェーデンの多くの大企業を傘下におき、年間売り上げは1兆4000クローナ(約16.8兆円)、2019年にはスウェーデンのGDPの約27.8%に相当します。
国内に限らず世界各国との広いネットワークを持っており、世界の権力者の中でも高い立場にあるといいます。
政府や地方公共団体や産業界、教育機関や研究機関、さらには人権尊重や環境保護などの活動も推進するなど、ヴァレンベリ家の力と影響力は圧倒的です。
スウェーデンを語るには、彼らの名を出さないのは不可能だという印象さえ受けました。彼らがどのような局面でどのような役割を果たしているのか、分かりやすく解説されています。
まとめ
以上、『スウェーデン福祉大国の深層: 金持ち支配の影と真実』をご紹介しました。
あまり表面に出ないスウェーデンの裏側。スウェーデンを賞賛するばかりの声に良いスパイスとなる当書。
はじめにの部分で著者はこう語られています。
読者が、スウェーデンの「光」と「影」の両方を知ったうえで、それでもやはりスウェーデンは理想的な国家だと判断するならば、それは本書の意図に沿ったものであり、執筆した意義があったというものです。
大のスウェーデン好きと自負する著者が執筆する『スウェーデン福祉大国の深層: 金持ち支配の影と真実』。
皆さんも、ぜひご一読ください。
では、本記事をお読みになっていただきありがとうございました。Tack och vi ses!
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